« 2005年08月 | メイン | 2006年02月 »

2006年01月31日

35歳チャンプ

ボクシング 越本、日本人最年長の35歳王者獲得 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

微妙な判定ではあったみたいですが、勝って良かったですね。
この年齢で体力を向上するのはかなり大変だろうと思います。きちんとトレーニングをすればまだ体力を伸ばせる年齢であることは間違いないのですが、その効率がとても悪いことは確かで、私自身も相当苦労したので、プロの求める体力でならどれだけ難しいかと。元々少ないトレーニングから効率が悪いから倍のトレーニングにすることはできても、一日中トレーニングするレベルからさらに上げるのは無理なわけで、効率の悪さをいかにカバーするかが難題となるでしょう。

僕は18歳の時に学校の体育で週に一回だけウェイトトレーニングをしました。約4ヶ月でベンチプレスは倍になりました。今回ボクシングの傍ら、週に3回トレーニングをしました。1年間でベンチプレスは1.4倍くらいにしか増えませんでした。体力は向上できるけど、とても時間がかかるし、成果が見えにくい。自分のやっていることが正しいという自信がなかったら続けられない。しかし、正しいことをきちんとすれば必ず成果が出るのが良いところで、1年間のトレーニングでコーチも僕も信じられないほどきちんと体を作ることができて、年齢を言い訳にしてはいけないなぁと改めて思いました。と同時にもっと効率の良い年齢の時にマジメにすれば良かったとも思いました。

それにしてもこの新チャンピォン、1敗しかしていないんですよね。にも関わらずこの年齢になってしまったというのはやはり興行主の力が無かったからでしょうね。もっとも、この年齢で今だからチャンピォンになれたのであれば、世界戦をここに持ってきた興行主のおかげとも言えます。選手の技術、体力だけじゃないプロスポーツの難しさを見たような気がしました。

2006年01月25日

トレーニング再開? いえ考察開始です。 ジャブ

トレーニングとかを再開しようと思っていますが、まだ少しかかりそうなので、自分なりのボクシングとトレーニングの考察を書いて見たいと思います。

思いつきで書いていくので抜けもあるかと思いますが、ご容赦ください。
古典物理学を信仰し、ニュートンを神のようにあがめる人間が見たボクシング論です。

ジャブ:
ジャブは他のパンチと根本的に違う。おそらくジャブは唯一背骨を軸とする回転を使用しないパンチだと思う。つまり姿勢保持という意味を除けば背筋を使わない類稀なパンチ。そのため威力はとても小さいはず。
これは求められる要素が違うことにも起因している。ジャブは相手にダメージを与えるためのパンチではなく、リーディングパンチとして一連の攻撃をセットアップするため、あるいは相手の出方を探るため、はたまた相手の攻撃をしにくくするためなど、補助的な意味合いが大きい。速さ、即応性、柔軟性などの面では有利だし、カウンターも受けにくいから(比較的)考え無しに打てるパンチ。間が持たないとか、作戦が決まらないとか、相手の動きがわからないという時にも使いやすい。カウンターを受けにくいというのはまさに、このパンチの特異性をあらわしていて、背骨を使わない、体幹の質量移動を伴わないから、自分の腕が持つ以上の運動量を持たない、そのためにカウンターを受けてそれが全部跳ね返ってきても大した破壊力にならない。
では逆にジャブに求められることは、いつでも好きなときに好きなように打てること(守備にも使うとなればなおさら)、相手に読まれないで打てること(モーションが小さく速いこと)、そして好きなだけ打ち続けられること、などになると思う。北斗の拳じゃないけど、ものすごく速くたくさんジャブを打たれたらそれだけで攻めにくくなることは確実。リーチが相当違う場合を除けば、入ってくる相手にいつでもジャブを当てられるのはすごく魅力。特にボクサースタイルで半身になって打てればかなり有効な防御兵器になる。

リーディングパンチとしてのジャブ:僕がボクシングをしていて一番面白かったのは、タクティクスの部分。たとえて言うなら、将棋やチェスをしているのと同じ。(だからチェスボクシングってけっこうツボにはまっていると思う。)コンビネーションパンチは、将棋で言えば自分の得意な定跡みたいなもので、たくさん技を持っている人はいろんなシチュエーションに対応できる。逆に自分の得意技を使えるシチュエーションを作るのがリーディングパンチであるジャブの仕事でもある。典型的な例がワンツー。いきなりストレートは打ちにくいがリードパンチで相手の注意をそらし、視界をさえぎることで右が打ちやすくなる。


タクティクスとセットアップについてはまた詳しく書きたいと思いますが、これがすごく大きな部分を占めることはとても面白いと思います。絶対的に物理的な能力差がある場合を除けば、駆け引きや戦術はものすごく有効で、何百ラウンドもスパーリングしたコーチと練習していればもうだいたいお互いの手の内はわかっているだけに、ほんとにキツネとタヌキの化かし合いみたいな感じでした。幸い、僕の練習のために、彼は必ず同じパターンを複数回連続で使ってくれるので、パターン毎の対応策を毎回練習できました。しかし、殴られている最中に相手のパターンを分析して対策を考えて実行するのは、非常にデマンディングで、本当に良い頭の体操になったと思います。殴られる>悔しくて対策を考える>でも同じ攻撃が来ないと対策使えない>同じ攻撃を相手にさせるためにわざと隙を作る>でもあんまりあからさま過ぎて相手がのってこない>そのうち対策を忘れる>忘れたころに同じのをやられる とかそんな感じで、頭の中では「左フック来い来い。」とか思いながらやっていることもしばしば。でも対策考案中とか対策待機中はそっちに頭のパワーが食われて他がおろそかになったりもする。そんな時も気軽に打てるジャブは大活躍。ジャブ連発中なら頭で他の事を考えられるから。(でもほどほどにしないと、注意力散漫でやっぱり打たれる。)