うさぎの肉離れ
サッカーのオシム監督の語録に
「肉離れ?ライオンに襲われた野うさぎが逃げ出すときに肉離れしますか?準備が足りないのです。
私は現役のとき一度もしたことはない。」
というのがあるらしいが、。。。。。
じゃぁ、うさぎはどんな準備をしたのだろうか?
もちろん、子供のころから走り回ったり、兄弟で追いかけあったりしたこともあったろう。
でも、おそらく一番のトレーニングは、「必死で逃げた」じゃないだろうか?そして、そこで逃げ切れなかったうさぎは、この世からいなくなる。逃げている時、辛いだろうし、疲れるだろうし、あちこち痛かったりもするかもしれない。もう走れないと何度も思ったかもしれない。でも逃げ続けた。そういう必死の動きが強い体を作ると思う。
僕がスパーリングで時間無制限というやり方を入れるのは、ボクシングの技術を向上させるためではなく、ギリギリに追い詰められても動く体と精神力を得たいからだ。どれだけ続くかわからないから、少しでも計算して体力を残したい。でも、それでは、速さに勝るコーチから身は守れない。ライオンに捕まってから、「じゃ、後半はがんばるか!」では済まない。だから、結局、常にその瞬間のベストを尽くして、もともと計算していた以上の力をどっかから引っ張ってくるしかない。
普通の3分1Rに比べれば、当然動きは悪くなってくる。でも、それは相手も同じ。両者疲れが増して動きが遅くなりつつも、相手は常に速度と体力では自分より優位である。絶対的な強さは弱くなりつつも、相対的な不利は永遠に続く状態。簡単に言えば、ものすごく不利にはならないけど、絶対に勝ち目は無い時間が永遠に続く・・・・・。ほとんどのスポーツなら、疲れてきたらさぼって点を取られておしまいである。でも、ボクシングでは点を取られるではすまない。文字通り、「痛い思い」をすることになる。だから、必死で動かす。腕が鉄アレイよりも重く感じるけど、ガードしなければ頭を守れない。もう楽したいって何度も何度も思うけど、そこに逃げるわけにはいかない。そうして、疲れて疲れて疲れた体に鞭打って動かすことで、本当に強い筋肉が出来上がると信じている。そうして作られたうさぎには肉離れの心配は無い。
ちなみに、ボクシング以外でも、疲れたからってやめられないスポーツというのはいくつかあって、同じように必死で身体を動かすことになるので、トレーニング効果は絶大。僕が試したのはたとえば、ウィンドサーフィン(止めたら陸に帰れません。。。)、ヨット(ブラジルではマストが折れるという危機も乗り切った。)、フリークライミング(僕は命綱の存在を忘れてしまう性格なので、本当に必死でやってます。)など。
閑話休題
僕に比べれば、はるかに体力のあるコーチだが、それでも時間無制限はきついらしい。(当たり前だが)無制限ラウンドをやっていると、段々殺気が増してくる。なぜなら、彼は対戦相手を倒しておしまいにするという選択肢を選べるから。そのため、普通の練習でたっぷり疲れてからスタートする無制限ラウンドの、さらに後半には、相手の攻撃がラストスパートに入るというおまけまでつく。一瞬の油断が、頭の周りを星だらけにしかねないので、本当に真剣になれる。強くなりたい人や脂肪を落としたい人にはお勧めです。
必死でするトレーニングは値千金!