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April 14, 2005 アーカイブ

April 14, 2005

ビバ!薀蓄

 初めてヒラミルミドリガイを見たとき、よくこんなのを発見するなぁと感心するとともに、その色、美しさ、形の愛らしさに感動したもんだ。海草にへばりついているわけで、木にへばりつくカメレオンの擬態のように、いや、よくみなければわからないナナフシのように、といったほうが言い得ているような気がするが、要は海中という空気的にも限られた空間の中で発見するのは難しい生き物である(少なくともあたしには)。以来あたしはヒラミルミドリガイを見つけたくてたまらないのであるがいまだかなわず、陸に上がりっぱなしで夢の中ですら逢うことはない。
 おそらくそのヒラミルミドリガイと出会ったころから、ウミウシが好きだ。あたしの育った横須賀の海はウミウシというよりもフナムシのイメージの強い海辺だからウミウシをよく目にしていたとは思えない。どうしてウミウシがこうも気になるのかはうまく説明ができないのだが、おそらくは大抵荒れて状況のよくない海に体力勝負って感じで潜っていたあたしにとって、唯一気が休まる存在だったんじゃないだろうかと、思う。
 わけのわからない形をしている。噛んだガムをペッてだしたみたいな色だったりするし、子供が紙粘土に変な色のペンで適当に色をつけた、という代物的な印象も受ける。ときとして、でかっく切り過ぎたイカの刺身の様でもあり、へろりとめくれて漂っていくさまはまるで踊るフラバーのようだ。
 今日先日お会いした出版社の人のところに遊びに行ったら、そこのチームにいる編集者の人が巻貝とウミウシの体の構造の差異について語ってくれてすごく面白かった。帰ってくる途中で貧血で気持ち悪くなったけれど、家について海辺生物の図鑑を取り出してみていたら気分がよくなってきた。うーん。海洋生物学を勉強したい気分だ、とか思いながら元気になったついでにビールを飲んで酔っ払った。レイチェルカーソンは海洋生物学者なんだよなぁ、なんてぼんやり思っていた。
 いつも思うけれど、ジャンルを限らずマニアックな人の話を聞くのは非常に楽しい。マニアックな話をしている人の目つきが、またよい。よく、飲んでる席で薀蓄を語ってる人を非難する声を耳にすることがあるけど、あたしにはそれがよくわからない。薀蓄は聞けば聞くほどに面白く、もっと掘り下げて聞きたくなる。あたし自身は、あんまり語れる薀蓄持ち合わせてないところがちょっと悲しい。語りたいことをうまく言葉にできないことも。

扉について

 最近扉について、よく考える。大抵は自分の部屋を出るために鍵を開け、扉を開き、外の空間に出て、地面に足をつけ、くるりと振り向いてまた外から鍵をかける、という一連の動作のときに考えるのだが。
 あたしが住まわせていただいている部屋は、楽器厳禁である。つまりは静かに暮らせというわけなんだろうが、いかんせん壁が薄い。隣のくしゃみや話し声は聞こえるし、笑い声や先日も書いたけど、けんかしてる声なんてのもばっちり聞こえるわけだ。
 さてはて、わが身に置き換えて言うと、どこまで聞こえてるんだろう。このキーボードを叩く音は聞こえているんだろうか?レッチリやエラやフォーレのレクイエムなんかも聞こえてるんだろうか?おそらくはイエスだ。ってことは、発声練習や歌の練習をしてたりするんだけど、まぁ多少は気にしつつ声量を落として歌ってはいるものの、それらも聞こえていて、「隣のやつはまた歌ってやがる」とか辟易されているかもしれない。
 多少気にはしているけれど、自分の音がどこまで近所に聞こえているかは想像しかできないので、案外でかい声で歌っているに違いないし、声量を落として歌っていることでものすごい欲求不満になるので、時々実際でかい声で歌っちゃうときもある。よく玄関の近くで歌を歌いながら、出かけるために扉を開けたりすると、シュンと声が小さくなる自分に気がつく。
 近隣に音が聞こえているのを知っているのに歌を歌うのは、扉の存在によるところが大きい。隣近所もおそらく然り。扉がしまっていれば大抵の音は許される、となぜか思っている。ただの鉄の扉なのに、そうなってくると意味が違ってくる。ただの扉は、ただの扉じゃなくなって、それを開ける行為が非常に勇気の要るもの、のような気がしてしまう。 

 あれれ、でもここまで書いて思ったけど、それってただの内弁慶なだけ??かもね。

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