てつおといえば、山口トモロヲか、アキラの主人公。ちなみに、後者のほうである。京浜地区とか京葉地区とかのコンビナート群を見るといつもアキラを思い出す。バイクのテールランプの流れていく様子がものすごく印象的で、あのシーンだけ何度も見たりして。
何年前だったかなぁ、渋谷でオールナイト「近未来映画3本立て」みたいなのをやっていて、たぶん渋谷の映画祭のときなんだけどアキラ、ブレードランナー、未来世紀ブラジルを観た。池袋の文芸座(だったと思う)でも「マトリックスに影響を与えたジャパニーズアニメ特集」で、アキラ、攻殻機動隊とかやってたんだけど、いつ観ても、てつおが施設から逃げ出して路上で幻覚を見るシーン、というのがものすごく気になる。
何で気になるかというと、あの幻覚に似た感覚というかイメージを、あたし自身がよく抱くからだ。たとえば子供のころに親に黙っていたずらして、後で大変なことになって自分がそのいたずらをやったといい出せなくて吐きそうになったとき、とか思春期に失恋して吐きそうになったとき、とか締め切り間際の仕事でにっちもさっちも行かなくなって吐きそうになったとき、とか。まぁようするに、追い詰められて緊張してストレスで吐きそうになるときに、本当に口から胃腸が全部出ちゃう気がするわけ。
あたしは実際吐いちゃったりあまりしないし、胃腸も口から出たりはしない。てつおは幻覚で道路に吐いてしまった自分の胃腸をかき寄せるわけ。もちろん幻覚なもんだから、周りにいる仲間は「こいつやべーぞ」ってことになる。あたしはあのシーンを見ながら、なんかものすごくてつおに共感を覚えている。アキラの再来を期待されて、望みもせずにアイデンティティーの危機にさらされるてつおが、最後に「ボクはてつお」だとつぶやくエンディングは、あれ、いったい何がアキラなんだっけ?と思わせる。
アイデンティティーって「ぼくはてつお」みたいに、自分は自分だと思い続けることで保たれるのかな・・・。実際あたしはあたしでしかありえないと思っているけれど、あたしが捉えているところのあたしって、じゃぁいったい何??みたいな気持ちになることもある。そんなことに気がつかずに、へろーんと生きているときもある。むーん、てきとー。だけど、幸いなことに、口から胃腸は出ちゃったりしてないので、寝て譜面書いてしてるだけなのに、おなかがすいたりしちゃうわけです。