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March 26, 2006 アーカイブ

March 26, 2006

桜の樹の下には

 私の大切な友人が眠っている。毎年この時期になると,桜の花がちらほらと咲いているのを見ては胸がきゅんとする。散り始めた桜が風に舞うのを見ては目頭が熱くなったりする。東北沢の駅に向かうところの民家にある枝垂桜はまだ梅が散り終わらないうちから花を付け,メジロが蜜を吸いに来ている。少し肌寒かったりするけれど,ああ,また今年も桜の時期になった,と確認する。はらはらと。
 村上春樹がフランツカフカ賞をとったそうな。そんな時代なんだな。ハルキはなんかの作品の中で人生の折り返し地点のことを書いている。あたしは,人生の折り返し地点を26だと決めたので,まぁそれはあたしの人生が52で終わるということを意味するわけでは到底ないけれど,今のあたしは復路なわけです。なんら意味はない。ただ,折り返し地点を過ぎたということで収束に向かうのではないかと期待したりする。折り返し地点を過ぎたことで,しみやしわを愛おしく思ってあげられたりします。晩酌に幸せを感じちゃったりしてもいいと思えたりします。白髪が増えてきてもそんなチャームポイントがあることをいけていると思ったりします。
 神楽坂の赤城神社でも桜が咲き始めていて,そういうのを見ると,ああ,また一年が繰り返されていくわけだと実感したりする。昼間の境内は時間の流れ方が独特である。一瞬自分がどこにいてなにをしているんだろうかと疑問に思ったりする。ニューシネマパラダイスの誰もいない広場を映した絵を見ているような感覚にとらわれたりする。白っぽくて砂っぽくて,とてつもなく切ない。風が吹く。満開になった桜はやがて春埃となって地を舞うだろう。友人が眠りについてから,もう15年以上経っている。その間も桜は咲いてはらはらと散っていった。先日,夢でその友人に遭った。詰襟を着ていて,相変わらずだったけれど,あまりに懐かしくて,目が覚めたら泣いていた。人の命が喪われたり損なわれたりする状態はないほうがいい。どこかで開きそうになった蓋をぎゅうぎゅうと押して閉めながら,愛と平和について考えた。

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