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道端に

愛が落ちている
擦り切れて
踏まれて
ぼろぼろで
まるでひどく汚れたところを拭いた後の雑巾みたい

誰も気がつかずに
自転車やバイクもその上を通る
歩道から誰かはタバコの吸殻を投げつけたりして
犬も寄らない

しばらく前まで
やっぱりあたしもそれが愛だと気がつかなくて
それでもずっとそこにあるから
あの汚れた塊は何なんだろうと思っていた

あるとき
ちょうどその塊の対岸で信号待ちをしていて
ヘッドホンから大音量で流れ出す音にあわせて歌っていたら
気がついてしまった

あ,あれは,あたしが落とした愛だ

目の前をトラックや車がごうごうと行き過ぎる
信号はまだ変わらない
右を見て
左を見て
右を見て
向こう側に渡るチャンスを探っていた

あたしのすぐ脇を
車が大きなクラクションを鳴らしながら通り過ぎる
ようやくのこと
ずいぶん長い信号が青になったから
急いで対岸に走っていった

愛は,もう,そこになかった


道端に
ずいぶん長いこと
愛が落ちていた

擦り切れて
ぼろぼろで
ぐちゃぐちゃで
どろどろで

きっと車のタイヤに轢かれて
踏みつけた靴底のガムみたいに
しがみついてくっついていったんだろう

あたしがずいぶん前に落とした愛は
きっとあたしを呼んでいた
だけどあたしが気づいたときには
愛想を付かしてどこかへ消えた

コメント (2)

saxwolf:

なんだか悲しい文だね、
なんとも言えない、心が締め付けられる気持ちになりました、
今、ココにある愛だけでも大切にしたい、
俺の持ってるこのネット上のコミュニティにも、
何らかの形の愛情があると信じたい、、、
ほんの僅かでも良いから、
そして、俺のコミュニティに参加してくれてるアナタにありがとう、
明日には、心が晴れていますように、
おやすみなさい

saxwolf

meg:

saxwolfさん

こうやって,大事なものを失っている経験て,実は沢山あるのです。たいていは失っていることに気がつかなかったりする。
失う前にちゃんと気づけばよかったと,後で思ってももう後悔先に立たずですが。
ラッキーだったら,また手に入れる,戻ってくることがあるでしょう。でもたいていは無理です。
私と外側とのかかわり,私と私自身とのかかわりの中で,それこそ日々更新される関係性は,愛という言葉で代弁しましたが実に危うくて私のあり方一つで実に強固にもなる。対ヒトというだけじゃなくて,モノでもユメでも。
ああ,あれは私が落とした,と気がつくだけラッキーだと思う。ずいぶん経ってからなくしたことに気がつくこともあります。一生気がつかないこともあります。
自分の書いた詩について解説するのはあまり得意じゃないのですが,こういう事態にならぬよう,日々きをつけて生きていこう,みたいな感じかな。

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November 30, 2006 12:38 AMに投稿されたエントリーのページです。

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