21のときに
顔に消せないしみが出来た。そのころのあたしは毎週のように,海に潜りに行っていたので真っ黒に日焼けしていた。ある日のこと,潜り終えて帰ってきたら顔の皮がぼろぼろと剥け始めた。いつものことなのであー今年も顔の皮まで剥けたかと思っていたら一箇所だけ剥け残った。まぁ明日になれば取れるだろうと思った。取れなかった。数日たった。取れなかった。冬になり色が白く落ち着くと,余計そのしみの黒さが目立った。ちょうどそのころマックのノートが出たときで,スーツを着たキャリア風のイメージ画像を撮影した。出来上がった写真を見ていたら,一緒に見ていたバイト先のお姉さんが,「あ,しみ」と言った。そのとき初めて,これは日に焼けた後の焼け残りじゃないことが解った。しみ,だった。
しばらくそのしみと格闘した。コンシーラーで隠してみたり,しみをとるなんちゃらをあれこれためしてみたり。いつの間にか無駄な努力は止めた。しみはいまだにあり,出来た当時とどこかしら変わったところもあるかもしれない。大きくなったかもしれないし,色が濃くなったかもしれない。鏡を眺めるごとに,そのしみも眺めるわけで,いつの間にか,そのしみは顔の一部になった。いとおしささえも感じるようになった。年をとるということはこういうことかな。自分に出来たしみすら愛せるようになる。悪くない,と思った。