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July 3, 2007 アーカイブ

July 3, 2007

杏の香り

 電車や車で移動していると,四季の香りを忘れてしまう。やはり季節を感じるには,徒歩でないと駄目だ。最近家の周りを歩いてうろうろすることが多く,今まで気がつかなかった自然に目が行くことが多い。
 先日歩いていたら,車どおりの多い道の端にガクアジサイが咲いていた。普通のアジサイとは少し違ったこの花が,私はとても好きだ。「ほぅ」と思いながら歩いていると,どくだみが密生して花を付けていた。なんともいえない草いきれが,実際香ってもいないのにイメージされる。「へぇ」と思ってみていると,その辺りの草花の茎に泡状のものが見えた。これは懐かしい。泡の中に虫が住んでいるのだ。私が生まれた横須賀では,この虫が庭に沢山いた。へぇ,都内もまだまだこんな身近に懐かしい自然があるんだなぁ。
 今朝も歩いていたら,公園の傍に差し掛かった辺りでものすごく懐かしい香りがした。杏の香りだ。あれ,杏があるのかな?と思ってきょろきょろしたけれど,見つけられなかった。そういえばこの辺りで,梔子の香りもしたことがあるな。
 私が生まれた横須賀の家の庭には,我々孫が生まれたときの記念にと祖父母が植えた木があった。姉はカイドウ,上の兄はタイサンボク,下の兄はアンズ。私は・・・木ではなくて,フリージアの鉢植えだった(笑)そういった記念樹だけでなく,枇杷,柿,桃,栗,竜舌蘭,バラ,梔子,牡丹,ケヤキ,クヌギ,ヒイラギ,椿・・・沢山の木が生えていた。フキノトウが生えてきたり,アケビや木苺がなったりした。
 あの木々はどうなったんだろう。祖母が亡くなって,家も亡くなった。私はあの庭で四季を感じて生きていたのだ。そんなことすら忘れていた。地蜘蛛の巣を掘り返したり,ざくろの実を採って食べたり。庭石をひっくり返して蟻の巣を観察したり,時にはカナヘビの卵を見つけて孵化させたりした。あの朽ち果てた木の門から外に出ることが恐ろしく,一人ではどこにも行けないと思っていたのに。今はかの地に似た,高台で風に吹かれている。

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