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夕暮れと朝の空

 雨が上がって,まだ風が強い夕暮れ。さっきまで人通りのなかった道に,なんとなく活気が戻っている。人の笑い声や自転車のベル,子供たちをたしなめる母親の声。夏の夕暮れだな,と思う。鉢植えたちは無事にやり過ごしたかな,と思っていたら「ゴツ」と鈍い音がする。なんだろう?と思って玄関を出てみると,アメリカンブルーの鉢が落ちていた。風,強かったしな。台に置いている鉢植えを全部地面に移した。風であおられて割れちゃ困る。
 ベランダの窓を開けてしばらく外を見ていた。空はどんよりと曇り空。明日は晴れるんだな,と思った。届いたピアノでDon't let me be lonely tonightを弾いてみた。うまくないが,悪くない。ささやかな自画自賛。人の心に深くもぐりこむ曲と言うのが確かにあって,ある人にとってはそれはJ-popかもしれないし,Soulかもしれないし,R&Bかもしれない。まぁ,そういった場合カテゴライズになんら意味があるのかなと思うけれど。
 友人のオノセイゲンがあるときこんなことを言っていた。歌詞なんか全然知らなくたって,歌そのものをしらなくたって,本当にいい曲は心に沁みるんだよ,って。その通り。それは,風が描き出す雲の模様に感激したり,挽き立てのコーヒーの香りに癒されたり,そんなことと同義だ。とても直感的なことだ。
 しばらく譜面を書いたり,マイルスの伝記を読んだりして時間を過ごしていた。このマイルスの伝記というのが実に厚くて重い本で,最近の首と肩の痛みは,この本を熱中して読むからだと思っているんだけれど,案の定首も肩も悲鳴を上げ始めたので読むのをやめた。
 もうこうなってしまうと横になるしかないので寝ながらあれこれ考えていた。風は相変わらず強くて,びゅーびゅーと鳴っていた。そうこうしているうちに,どうやら寝てしまっていたらしい。でも,肩が痛いなぁ,これ治らないかな,と思ってマッサージを試みてみたり,あの譜面は,あの曲の最初は,とものすごく沢山のことを考えていたことを覚えているのであまり深く眠っていなかったのだろう。目を開けると,いろんな光の模様が,カーテンの隙間から床や天井に映し出されている。朝だ。
 しばらくぼーっとしていて,光の勢いが強くなるのを眺めていた。きっといい天気なんだ。起きない手は無いな。でも,少しも体が休まった気がしない。時計を見ると4時半。ああ,段々最近目覚めが早くなっている。確実に夏が近づいている証拠だ。
 おきてカーテンをあけ,ベランダの窓を開ける。まるでドラクロアみたいな空。あー,綺麗だ。この間まで小休止していた花々もみんないっせいに花を開き始めて,ほぼ根元まで刈り取ったイタリアンパセリも新しい芽を吹き始めている。ああ,外の見回りもしなければ,とオクラやトマトを見に行くと,トマトがほんのりと色づいていた。随分他の実も大きくなっているので,支柱を増やしてみた。他の花々も無事。よかったよかった,とクローバーとアメリカンブルーを台の上に戻して洗濯に取り掛かった。
 大量の洗濯物を洗って干して,一息ついてコーヒーを淹れて,掃除をしてごみを出して・・・と,ゴツ,と鈍いいやな音がした。玄関を開けると・・・アメリカンブルーとクローバーが風にあおられて落ちていた。しかも,鉢が割れてしまった。浅はかだったな,と反省しつつ植え替えた。そんな一日が始まる,台風一過。

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July 16, 2007 7:18 AMに投稿されたエントリーのページです。

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